急成長する中国のD2C市場 導入における課題とTmallのD2C戦略を解説
コラム記事
2022/2/28

EC市場として、世界最大の規模を誇る中国では、近年日本で加速しつつあるD2Cマーケットもいち早く拡大しています。
そして、2021年には中国最大手ECサイト「Tmall」が、D2Cサービスプラットフォームへ移行するための新戦略を発表しました。
今回は、中国市場におけるD2Cの現状について、D2Cを進めるにあたっての課題と、TmallのD2C戦略について解説します。
●中国市場におけるD2Cの現状と課題
ECの市場シェアが大きい中国では、D2C(Direct to Consumerの略称で、製造者と消費者が直接取引を行う手法のこと)で成功をおさめるブランドが多く登場しています。
ではなぜ、中国ではD2Cがこれほどまでに活発なのでしょうか。
下記、大きく2つの背景があります。
①中国では、国をあげてDX(デジタルトランスフォーメーション)を推奨している。
②労働人口が多く、働き手がいることから自社工場を保持しやすい。
しかし、中国では大手のECモールが台頭しており、ブランドごとの公式サイトは閲覧されづらいのが現状です。
そのため、D2Cにおける顧客とのタッチポイントを自社の公式サイトに限定してしまうと、ブランドを浸透させづらく、D2Cブランドとして生き残れません。
このような問題を抱える中、自社サイトではなく大手のECモールをブランドのプラットフォームとして活用するD2Cブランドが増えてきました。
●中国最大手ECモール「Tmall」のD2C戦略
D2Cが抱える問題は、大手ECモール側も認識しています。
そして、これからD2Cは多くのブランドの基盤となるだろうという点を見据え、ECモールとしてもD2Cブランドを戦略的に取り込もうと動き出しています。
そんな中、中国最大手のECモールである「Tmall」は、自社のサイトをB2C(Business to Consumerの略称で、企業と一般消費者がやりとりをするビジネスモデル)プラットフォームからD2Cプラットフォームへと進化させることを発表しました。
では、TmallのD2C化とは、具体的にどのようなものなのでしょうか。
大きく2つにまとめています。
1.Tmall内で消費者サービスの開発を可能に
D2Cブランドは、製造者がマーケティングや商品開発、そして商品を消費者に届ける物流までの全てを一手に担わなければなりません。
そこでTmallは、D2Cブランドへ向けて「マーケティング」「小売」「支払い」「財務」「物流」「メンバーシップサービス」などを実装できるツールとノウハウを提供し、D2Cブランドが各自で消費者サービスを開発できるような仕組みを作りました。
これにより、D2CブランドはTmallというインフラストラクチャーを通じて、消費者と継続的に繋がり続けることができるのです。
また、Tmallの仕組みを活用して、D2Cブランドの新製品開発の支援も実施されます。
2.新ブランドの立ち上げを支援
Tmallが重視する指標のひとつには、新ブランドの存続率が組み込まれています。
そして、今後5年間で100億元を投じ、新規ブランドを立ち上げる2,000社の起業家を支援・育成していくことを発表しました。
サポート施策としては以下のものがあげられています。
・ライブ配信
新ブランドに対して、ライブ配信サポート体制が提供されます。
具体的には、「Tmall公式ライブ配信ルーム」「ヘッドエキスパートによるサポート」「品質専門家のサポート」などが該当します。
また、新ブランド専用の独立コラムも設置し商品を紹介、そして新ブランドとして優れていると評価された場合には、上記に加えた特別なサポート体制も準備されています。
・商品マーケティング
商品を展開していく上で必要な、市場動向の把握や自社商品のポジショニング構築、コミュニケーション戦略までをしっかりサポートしてくれます。
そして、コンセプトや価格設定を見直したのち、リリースまでの伴走も行ってくれます。
・コンテンツマーケティング
新ブランドでは、コスト面からも人気モデルを起用することは困難です。
Tmallでは、Tmallを通じて人気モデルと直接契約ができる機能がありますが、新ブランドもその一部を活用することができます。
また、作成した広告を配信するプラットフォームやサポート体制も整っています。
・ブランドマーケーティング
「Treasure New Brand Day」というイベントを通じ、店舗のオープンや新商品の発表などができる場を提供しています。
このイベントを実施した翌日は平均して売上が180%向上するなど、インパクトの強いイベントとなっています。
●まとめ
このように、EC事業世界最大手の中国がD2Cへ向けて大きく舵を切り始めています。
ECサイトがD2Cのプラットフォームになる、という新しい試みが成功すれば、D2Cは今後もさらに加速していくでしょう。
これからD2Cはどのような立ち位置になっていくのか、今後の動向に注目です。
この記事の関連記事

急成長する中国のD2C市場 導入における課題とTmallのD2C戦略を解説
EC市場として、世界最大の規模を誇る中国では、近年日本で加速…
EC市場として、世界最大の規模を誇る中国では、近年日本で加速…
.jpeg)
中国D2Cブランドの成功事例|D2Cへの挑戦
日本において、D2Cブランドの市場規模は右肩上がりの成長を見…
日本において、D2Cブランドの市場規模は右肩上がりの成長を見…

海外でも大注目!米国における日本茶の動向について
海外でも注目されている日本茶。近年の健康志向ブームにコロナ禍…
海外でも注目されている日本茶。近年の健康志向ブームにコロナ禍…

デジタルギフトを効率的に活用するには?ソーシャルギフトキャンペーンのメリット
ビジネスシーンでも注目を集めている「デジタル・ソーシャルギフ…
ビジネスシーンでも注目を集めている「デジタル・ソーシャルギフ…

コロナ禍でどう変わる?ギフト市場の現状と今後
オリジナルのギフト商品をつくって販売したい、あるいは、企画開…
オリジナルのギフト商品をつくって販売したい、あるいは、企画開…

アップルのプライバシー規制強化からみるwebマーケティングの未来
アップルは、これまでプライバシー保護機能強化に関するアップデ…
アップルは、これまでプライバシー保護機能強化に関するアップデ…

Z世代とは? - 最近よく聞くマーケティング用語の解説 と 攻略方法
今、マーケティング界隈を中心に「Z世代」が注目を集めています…
今、マーケティング界隈を中心に「Z世代」が注目を集めています…

アパレルOEM製造業者検索時の注意点と【よろづくり.com】を工場検索にお勧めする理由
自社でアパレル商品の開発をしようと思い立った際に、生産の設備…
自社でアパレル商品の開発をしようと思い立った際に、生産の設備…